~皇女マリー殿へ~
ご無沙汰しております。
貴国におかれましては、流行病により多くの者が床に伏せったとの知らせが届いております。城内外におかれましても幾許かの患者がおられたのではと思い、心痛めております。
さて、先の教導隊視察、お疲れ様でございました。皇女自ら先陣に立ち教練するお姿は、下士官にとっても素晴らしき手本となったことでしょう。
隣国の貴族が申し上げるのも如何なものかと存じますが、是非とも優秀な軍隊をお育てになられますよう、お祈り申し上げております。
また、私のように教官に恵まれなかった者が、これ以上世に輩出せぬよう願うばかりでございます。
御父君であられます国王陛下におかれましても、大洋を越えての遠征に赴かれるとのこと。ご武運をお祈りするとともに、貴国の警護を離れている我が身を憂うばかりでございます。
東国に帰還しておる身ではありますが、有事とあらばいつでも馳せ参じる所存でございます故、お忘れなきよう。
さて、我が国も雨の多い季節に入り、登城の道中が重く感じられる頃となりました。
私も先の一件を含め、公私共に考えねばならぬ事柄を多く抱え、心身ともに重い日々を過ごしております。
わが筆も如何様にもおぼつかず、困り果てております。
ただ、何も書きとめず、何も伝えずにいるよりは、貴女様の嘲笑の糧にでもして頂ければと思い、こうして筆を走らせている次第でございます。
貴女様からの手紙を読む私は、どうも心穏やかでいられません。
この長い雨が終わる頃には、青空が見られるでしょうか。
~ズブロッカを抱えたプロイセンの青年貴族より~