登檣礼

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帰れる場所に -その名は「バージニア作戦」-

幾度かの季節と、幾重かの人生が過ぎてもなお、セビリアの街は賑わいを絶やすことなく、今日も航海者と共に時を刻んでいる。


風薫る商館街の白い石畳に、赤銅髪の男の姿があった。彼は目の前に構えた建物を懐かしそうに見上げている。
「・・・変わらないな」
そうつぶやくと、「3」と書かれた年季の入った看板を指で弾いてみせた。金属とも陶器ともつかぬ甲高い音を短く響かせて、看板は彼の訪問に答えた。

「お帰りなさいませ、お久しぶり・・・でしたでしょうか」
商館の中ではいつもと変わらず、商会秘書が書類の整理に追われていた。
「まあ間違いではない。しばらくセビリアには寄ってなかったからな」
赤銅髪の男は苦笑いを浮かべながらカウンターへ向かうと、担いでいた麻袋の中から琥珀色の瓶を取り出した。
「1杯どうだ、ラーベナルト」
男は秘書に向かって瓶をかざした。
「おや珍しいですね。何かいいことでもあったんですか?」
「特段何も無いんだがね。今日はなんとなくコイツをやりたい気分なんだ」
男はコキュコキュと音を響かせながら、瓶の口を切り開いた。そして秘書が持ってきた厚手のグラス2つに、琥珀色の液体を注ぎ込んだ。
「乾杯しますか」
秘書がグラスを掲げた。
「何に乾杯するかな」
男もグラスを掲げた。
「では、元商会長の帰還を祝って」
「ははは、私の帰還か?それでこの酒は贅沢すぎるな」
2人はかすかに笑みを浮かべ、グラスを交えた。古いコルクのような香りと、懐かしく深い味が口の中に広がっていく。
「・・・ふぅ。久しぶりだなこの味も」
「ええ本当に。大きな仕事が終わったときしか口にしませんでしたからね。あとは特別なことがあったときくらいでしょうか」
「ああ、そうだな。確か前に飲んだのは・・・2年前だったろうか」


2年前。海賊マルナードと欧州を追われた不名誉な高官等が手を組み、カリブ海の至る所で悪行が繰り広げられていた。その無法化に歯止めをかけるべく、サルミエントやバルタザールの艦隊、そしてバーボンハウスからも義勇艦隊が遠征し、カリブ海は近年稀に見る大海戦の舞台となっていたのだ。


赤銅髪の男は2年前に見送った商会員の姿を思い出していた。
「2年前か・・・懐かしいな。今は向こうの状況を入手する手段がほとんど無くてね。カリブ方面の戦況については、何か情報が入ってないかね」
「もちろん入れてもらってます。黒鯱の連絡員が定期的にここへ報告に来てくださるものですから」
「そうか。それで、今どんな状況だ」
「はい。南カリブに関してはほぼ制圧完了し、戦火に巻き込まれた港や集落の建て直しが始まっているそうです。ただ、西カリブについては優位に戦闘が進んでいるものの、殲滅には至っておらず、単発的な海戦が後を絶たない状況だとか」
「ふむ。実質上の消耗戦というわけか。黒鯱らしからぬ戦いだな」
「バルタザール殿も同じように考えておられるようです。そこである計画が持ち上がっているらしいです」
「ほぉ、ある計画とな」
男は空けたグラスに再び酒を注ぐと、秘書の言葉を待った。
「サルミエント商会バックアップの元、北米大陸沿岸に大規模な開拓地をいくつも作ってですね、商業および軍事の拠点とする計画らしいです。ある程度の地盤が固まれば、そこから討伐艦隊を南下させて海賊殲滅を断続的に行うという狙いのようです」
「なるほど、カリブの国有開拓地ではいろいろと限界があるだろうし、民間の開拓地を利用すれば欧州の市場活性化にもつながるわけか・・・」
男は赤銅色の髭を指で弄りながら何事か考え、視線を秘書の顔に向けた。
「・・・確かこの戦いは当初、各国の庇護は受けられないはずだったな」
「おっしゃるとおりです。しかし討伐が比較的順調に進んでいることもあり、カリブ海の利権を各国が視野に入れ始めているのも事実です。現にイングランドやヴェネツィアが開拓地に送った護衛艦隊が、公式に黒鯱と作戦を共にしているという話も聞きます」
「なるほどな。安全になれば甘い汁を吸いに行きたくなるってわけだ」
男は天井を仰いだ。そして話を続けた。
「で、大陸の開拓地がサルミエントの庇護を受けるって話だったかな。それはおそらく無償でという話ではないだろう。そんなの他の商会が納得するだろうか」
「当然納得しないでしょうね。特に我々の商会は」
秘書は入り口のほうに目をやると、やれやれという表情を浮かべた。男もそちらのほうへ目をやると、いつの間にか1人の淑女が入って来ていた。
「お帰りなさいませ、会長」
秘書は笑顔で迎えた。
「おぉ、久しぶり」
男も軽く手をあげて挨拶した。
「久しぶりね」
彼女も笑顔で答えた。


「ということは、バーボンハウスは独自で開拓地を立てると?」
「そうよ。わざわざサルミエントの力を借りて手間賃搾り取られるより、私たちだけでやったほうが早いし楽だし得じゃない?」
「まぁそうでしょう。ただ・・・私が言うのもなんですけど、人員がきびしいのではないかと」
「大丈夫よ。有力者を何人も連れ戻してるから」
彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「まずは開拓部隊ね。これはもう剣術に長けた冒険家として、討伐艦隊から編隊長に帰還してもらうことになってるわ。それとあなたと私の配下から何人か駐留させれば問題ないでしょ。次に産業支援と貿易を行う商船隊ね。これは私と提督一派がいればどうってことないわ。それと・・・駐在員として、通訳家のあの子と元会長に航海者として復帰してもらうつもりよ」
「元会長とは・・・疾風の御仁ですか!?」
「ああ、疾風の提督ではなくその先代の彼よ」
「おおっ、なんと彼が復帰なさる・・・というか復帰させる・・・ということですか」
「お願いしたら快く引き受けてくれたわ。さすがはバーボンの古参ね」
彼女の手腕に軽く慄いている2人を尻目に、彼女はさらに続けた。
「それで、実は疾風の提督さんにも話はしてあるの。彼はカリブのバーボン艦隊を束ねてる身だからどうかなぁとは思ったんだけど、現地には当時の副会長が2人共いるらしいから、統率が乱れるようなことはまずないわね。それから・・・そうそう、サーカムライナーの彼女も今はこっちの海域に戻ってきてるみたいだし、疾風の提督さんと組んでもらえれば、開拓地の哨戒は完璧ね♪」
喉が渇いたとばかりに、彼女は棚に飾ってある一番綺麗なゴブレットを取ると、カウンターの隅に置かれた小型のワイン樽からワインを注ぎ始めた。
「そこまで計画を立てているならいけそうな気がしますね」
その様子をただただ見ていた秘書が、ようやく口を開いた。
「でしょ?バーボンハウスってのは恐ろしいほどの連携力があるから。ちょっと勢いが衰えてきたこの頃にあってもなおこの連携は崩れてないのよね。ホントすばらしいわ」
ワインを1杯空けると、彼女はもう1杯ゴブレットに注ぎ始めた。
「あとね、この作戦名も決めてあるの」
「ほほぉ、作戦名ですか、聞かせてもらいましょう」
「開拓地の地名を取って、作戦名は『バージニア作戦』と命名します。参加艦隊は『バージニア艦隊』を名乗り、カリブ遠征中の『バーボン艦隊』と双璧を成すような大活躍を目指しますっ」
「『バージニア作戦』ですか。すばらしいですね」
「うむ。『バージニア艦隊』と『バーボン艦隊』で双璧とか、なかなかカッコイイではないですか」
「でしょ。さあ作戦決行の乾杯よ!乾杯!」
彼女はゴブレットをかかげ、一気に飲み干すと、秘書に向かって言った。
「ぷはーっ。それじゃ私は一足先にバージニアへ向かうから。復帰組の方々についてはヨロシクね」
そう言い残し、彼女は商館を後にした。
「・・・すごいアクティブですな・・・」
「・・・うむ、すごいパワーだ・・・」

商館に残された2人は唖然としながらも、やがて来るであろう戦いの火蓋と開拓地への思いを新たにしたのである。
「コイツを空けて、正解だったのかもな。・・・おかえり、友よ」
2つのグラスに注がれた琥珀色の液体がまた、商会の節目を彩っていた。


幾度かの季節と、幾重かの人生が過ぎてもなお、セビリアの街は賑わいを絶やすことなく、今日も航海者と共に時を刻んでいる。




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[ 2012/05/22 01:15 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(2)
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