登檣礼

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誰かのための108の断片 035

アンソロとは関係ないですが、「DOL×断片」のコラボ的な短編をば。





 地中海の風は、今日も穏やかに吹いている。

 マルセイユの離宮にも、港からの潮風が届いていた。花の咲く時期ではないけれど、庭園の緑は陽の光をたっぷりと受け、美しく輝いている。その間に長く伸びる石畳を、軽やかに進みゆく1つの白い影があった。その影は衛兵の近くでしばらく立ち止まり、やがて港のほうへと歩いて行った。


 港にせり出した一番立派な桟橋に一人の女性の姿があった。純白の召し物を風に任せ、輸送船に積まれる前の木箱の1つに座っている。彼女は空を見上げたまま、視線を動かさない。その先にはたった1つの雲。雲ひとつない空より、少しくらい雲があったほうが綺麗に見えるなあと、彼女が思ったかどうかはさておき。

 ふと出港所役人のほうを見ると、漆黒の衣装に身を包んだ若い青年が立っていた。桟橋の女性と青年はお互いに笑みを浮かべ、手を振っている。青年は桟橋手前の衛兵に何事か話をしているが、衛兵の首が横に振られると、肩をすくめて再び女性のほうに向きなおった。彼女はゆっくりとした動作で立ち上がり、停泊している隣国の輸送艦にちらっと目をやると、青年の元へかけていった。


「離宮へ行ったんですが、こちらだと言われてしまいました。」
 青年はふぅと一息つくと、久しぶりに見る彼女の美しさに頬を緩ませた。
「船が入ってくるところ、見たかったです。」
 彼女は彼女で照れくさそうに彼から視線をはずし、隣国の輸送艦を見つめた。
「桟橋の先は気持ち良かったですか?」
「気持ちいいですよ。残念ですがあそこは宮廷専用なので、あなたは入れません。」
「ひどいですね。他国の人間ですが私は王宮護衛の身ですよ。」
「あら、あなたは5月に任を解かれているじゃないですか。それに今回の新たな任官辞令は明日ですもの。」
 青年は少し渋い顔をした。彼女のたまに見せる真面目な指摘がすごく攻撃的に思えてしまい、畏縮してしまうのだ。
「…欧州広域遊撃隊隊士ユンカース、フランス王国国王陛下の勅命により、再びマリー様の護衛を任命仕り候。ただ今より解任の命が下るまで、フランス国家に従軍致し候。」
 青年は少しおどけた風に、わざと恭しく言ってみた。
「だから任官は明日だって言ってるじゃないですか。気が早いですよ。」
 そういうと彼女は、港沿いの街道を歩きだした。青年は決して横に並ぶことなく、その後を付いていった。



「御父上はもう遠征に行かれたのですか?」
「ええ。今頃はもう海の向こうの大きな島にいるでしょうね。」
「しばらく、さびしくなりますね…。」
「そうでもないです、幾分かは慣れましたし。ただもう一つ心配なことがあったので、そちらのほうでさびしい想いをするかと思ってました。」
「もう一つ心配なこと…とは?」
「それを聞いてしまいますか。あんな手紙を私に送っておいて。」
 彼女は青年の顔を見ることなく、話を続けた。
「…えっと、どういうことでしょうか。あの手紙に関係あることですか?」
「だって、あの手紙の口調からすれば、あなたもう私の元へは来ないつもりだったでしょ。それはすごく困るし、本当に来なくなったらどうしようと思ってたんですよ。」
 確かに青年は彼女にある手紙を送っていた。彼は愛していたのだ。国も身分も異なる上に主従関係にある彼女を、彼は本気で愛していた。


「すみません。……本当のことを言うと、あなたの仰る通り私はもうここへは来ないつもりでした。」
 彼が語りだすと、彼女は定期船用の桟橋前にあるベンチに腰を下ろした。
「少なくとも、あなたに嫌われていないことはわかっています。ただあなたに好かれているか、愛されているかといったら、それは定かではありません。この先愛してくれる望みも薄い気がしてならないのです。」
「私だってあなたを愛していますよ。でもきっとあなたの求める愛し方ではないんでしょうね。」
「よくわかりませんが、そうなのかも知れません。でも正直言って、…あなたの愛は伝わってこないです。」
「それはやはりあなたの求める愛し方ではないのが原因だと思いますよ。今のあなたの立場で、あなたの考える愛し方が相応しいと思いますか?」
「そう言われてしまうと、何も言えません。私達の間には主従関係というものが絶対的に存在するので、私の求める愛は叶わぬということになりますね・・・。残念です。」
 俯いて一呼吸ついた彼の横顔を見て、彼女は軽くため息をつき、気だるそうに言い放った。
「主従関係を絶対的にしているのは、あなた自身じゃないんですか?」
 彼は何を言われているかわからないといった表情で、彼女を見た。彼女は続けた。
「あなたは主従関係ありきで私の元に来ている。でもそれ以外の時はまったく会いに来ませんよね。」
 彼は内心どきっとした。が、表情は全く変えずに、何かに気づいたことを悟られないように彼女を見つめる。
「任務で来ているときには任務を遂行すればいいんです。部下としてのあなたを愛します。ではそれ以外の時は?主従関係を保つ必要は無いんじゃありません?」
 彼は彼女の真意がわかったような気がした。彼女は部下として自分を愛してくれていたのだと。だがその先に思考を向けるの勇気は、今この瞬間は持ち合わせていなかった。
「確かに、仰る通りです。公的な関係性の中に、私的な感情を挟んでいた、ということですね。公私混同も甚だしいというものです。」
「そうですよ。やっと気付きましたか。しょうがない騎士さんですねえ。」
 彼女は立ちあがると、元来た道を戻り始めた。彼もその後をゆっくりと歩いていく。


 離宮前までくると、彼女はくるっと後ろを向き、彼の顔を覗き込んだ。
「見送りご苦労さま。別邸でお茶でもご一緒しますか?」
「いえ、兵舎に出向いて事務処理をしなければなりませんので。」
「そうですか。それは残念です。ではまた明日、赴任式でお会いしましょう。」
 彼女は颯爽と離宮の門へ向かって歩みを進めた。
「ひとつ聞いてもよろしいですか?」
 彼の声に、彼女はまたくるりと振り向いた。
「任務が終わって、次の任務までに一度会いに来ます。そのときも私のことを愛してくれますか?」
「あら、任務外でいらっしゃるのはそれが初めてになりますね。だったら初めから愛してもらおうなんて、考えが甘いんじゃありません?」
 そう言うとまた前を向き、門の中へと姿を消した。口調はとても強かったが、彼女は満面の笑みを湛えていた。


 彼は大きく深呼吸をし、歩き出した。
地中海へと続く浅黄色の空、視線の隅に差し込んでくる離宮の白壁。新しい何かがはじまる喜びを、マルセイユの港が美しく彩るのであった。



fin







途中から何書いてるのかわからなくなりました^^;
前はこういうツンデレっ子もいいなぁとか思ってたんですが、最近はちょっと興醒めしてしまった感があって。

「私が幸せになる代わりに、プロイセンの青年には“彼女”に振り回されてもらおう」
というあまり意味の無い、かつ知らない人には意味のわからないことを勝手に設定してたんですが、このままだと“彼”のほうが幸せになってしまいそう。。。


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[ 2009/09/13 02:00 ] Geschenk | TrackBack(0) | Comment(2)
すんごいつんでれだ・・・・。

しかしアンソロどうしようw
[ 2009/09/16 10:24 ] [ 編集 ]
読み返してみて、、、確かにすんごいツンデレですね。。
というかデレが無いです(・x・)
[ 2009/09/17 00:58 ] [ 編集 ]
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