登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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キャプテンに捧ぐ

042510 193223


セビリアの街は、いつもと変わらぬ風が吹いている。
今日を生きる者、明日を夢見る者、すべての航海者の一瞬を重ね合っていた。


「いつものを頼む」
私は酒場のマスターにいつもの酒を求めていた。陸での仕事が忙しくなかなか海に出られない身であったが、久しぶりに船を駆る用ができたのだ。
「あいよ、今日はとっておきのが入ってるが、どうするね」
マスターは手の甲で1つの瓶を叩いて見せた。
「それは仕事が終わってからだな、今日はいつものでいいや」
私はマスターの背中に並んでいる瓶の中の1つを指差した。数多くの瓶が並んでいる中で、ただひとつ琥珀色の液体が入ったもの、それは我々バーボンハウスの商会員のみに与えられる嗜好の逸品である。
氷の上に注がれたその液体の輝きを楽しみながら、私は深く息を吸い込んだ。
「それにしてもあれだね、あんたんとこのベテランさん、陸にあがっちまうんだってね」
「え?」
「おや、知らなかったのかい。何て言ったかな・・・、そうそう、キャプテンって呼ばれてるあの御仁さ。なんでも使用人が自宅の財宝を盗んで消えちまったらしいぜ」
「それは・・・知らなかったな」
初耳であった。しばらく顔を見ないうちに、とはいえ私もしばらく海に出ていなかったのだが、まさかそんなことが起こっていようとは。
「それでな、海に出る気力が萎えちまったらしい。情けねえ話だが、わからんでもないな」
「彼の奥さんはどうするんだ。奥さんも確か航海者だったと思うが」
「さあね、そこまでは聞いてないが、おそらく旦那と一緒に陸暮らしになるんだろうよ」
「そうか・・・、なあマスター、ひとつ頼まれてくれないか」



その日、3番商館では彼を囲んで送別会が行われた。最後の最後まで、彼はいつもの調子でおどけていた。
「浮気がばれたので休止するってホントですか?」
「え^^;」
「マネシナイデクダサイ」
「ソレモマネデス」
他愛もない会話であったが、誰もが彼との別れを惜しんでいた。だが誰も悲しむことなくその場を楽しむことができたのも、彼の人柄ではないだろうか。などと考えていると、ふいに商館の戸を叩く音がした。会長が戸を開けると、そこには誰もが見知った美女が立っていた。
「おお、ロサリオじゃないか」
商館内はにわかに沸き立った。老舗商会とはいえ、酒場娘が直々に足を運ぶことなど滅多にないのだ。
「こんにちは皆さん。キャプテンもお出でかしら」
ロサリオはキャプテンの顔を見ると、美しい微笑を浮かべた。
「おや、キャプテンに御用ですか」
「キャプテン、まさか浮気相手ってのは!」
「あーあ、修羅場になるぞ~これは」
商会員からは次々と囃し立てる言葉が浴びせられた。
「え^^;」
彼もお得意の一言でさらりと返してきた。
「マスターから聞いたわ。キャプテン、陸にあがってしまうんですってね」
「ええ、そうなんですけど、もうマスターの耳にも入っていましたか」
「あなたほど有名な方のことくらい、酒場に噂が流れないほうが不思議だと思わない?」
「はは、まいったなこれは」
キャプテンは照れたように頭をかいた。
「それでね、これ、マスターからの餞別ってことで持ってきたの」
ロサリオの手には、1本の瓶が下がっていた。琥珀色に輝く、誰もが見知ったものである。
「これはこれは大層な物を、ありがとうございます。マスターも見かけによらず粋なことしますね」
「うふふ、そうね。あともうひとつ、これは私からの情報なんだけど」
ロサリオは彼に何かを耳打ちした。彼はそれを聞くなりパッと立ち上がり、目を細め唇を噛み締めた。
「どうした、キャプテン」
会長が尋ねた。
「犯人が・・・使用人が、見つかりました」
彼はゆっくりと答えた。
「よし、それなら捕まえに行こう。我々の手で大切なものを取り返すんだ」
会長は力強く叫んだ。しかしキャプテンは首を横に振った。
「いや、これは私個人の問題です。それに、・・・相手はイスパニアに関わる人間です。商会あげて立ち上がれば商館没収ということにもなりかねません」
「そ、そうなのかロサリオ」
彼女は軽くうなずいた。
「ええ、おそらくこの名前を出したら皆さんも動き出すだろうと思って、彼だけに耳打ちしたの」
「しかし、商会員が困ってるときに動かないでいるなんて、そんなのバーボンハウスじゃない」
「そうだそうだ、我々がイスパニアに属しているからといって、理不尽な言動に屈するわけがない」
その場にいた商会員からは、次々と決起の声があがった。しかし、キャプテンの一言がそれを制した。
「・・・私の帰ってくる家を、無くさないでくれないか」
商館内は一気に静まり返った。彼は続けた。
「バーボンハウスってのは、みんなの家です。私がもし戦い疲れて、敗れて帰ってきても、また迎え入れてくれる場所があるということに活力の源があるんです」
「そうだったな。ある偉い人の言葉にこんなのがある。『帰れる場所があるから、強くもなれるし、弱くもなれる』ってね。帰れる場所を守るのも、我々商会員の仕事なのかもしれないな」
会長の一言に、皆うなずいていた。
「ありがとう会長。みんなもありがとう。いつか戻ってきたら、またみんなと海に出たいです。それまでしばらくの間――」
「行きましょう、キャプテン!」
「え・・・?」
「バーボンハウスはここにいるだけがすべてじゃありません。商会に所属してないだけで、心はいつもバーボンと共にある者、そんな血気盛んな軍人がたくさんいることを、キャプテンはお忘れですか?」
「現会員はバーボンハウスでキャプテンの帰りを待ちます。だからキャプテンは、同胞の非会員を連れて、堂々とイスパニアの暗部と対峙してきたらいいんですよ!」
皆、口々にまた決起の声をあげはじめた。だが一様に、いたずらっ子のような笑みも浮かべていた。
「まったく、これぞバーボンといったかんじですね^^;」
キャプテンも苦笑いしつつ、内に秘めた闘志を隠そうとはしなかった。
「ではさっそく、出撃の準備に取り掛かります。みなさん、同胞への連絡はお任せできますか?」
「それはキャプテンが一人で走り回って声かけるんですよっ」
「え^^;」


セビリアの街は、いつもと変わらぬ風が吹いている。
マスターに頼んだバーボンが、彼の懐に抱かれていた。願わくばその一瓶が、彼のお守りにならんことを。






ヌパロフ氏の船倉に、ウィスキーを1樽入れてもらいました。
お守りにもなるし、目印にもなる。そんな魔法のかかった1樽ですぜ。
いつでも帰ってこれるように、みんなで留守番してます。

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[ 2010/04/26 23:36 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(6)
いろいろありがとうございました^^
ブログときどき見させてもらいますね^^
[ 2010/04/27 15:07 ] [ 編集 ]
↑せんちょー同じ内容だとコピペだと思われますよ・x・

しかし、私もSS書いてるのにさきこされたー

しかもこれ、かなりいい文章じゃないですかっ
途中で泣けてきたわ・・・・

私も頑張ってSSしあげますよっと。
[ 2010/04/27 17:14 ] [ 編集 ]
ヌパロフ氏
きっと次のカムバックキャンペーンで戻ってきますね(え^^;

ミッタマさん
なにか書きたいなぁと思って、「行きましょう、キャプテン」ってフレーズが思い浮かんで、
そこからは一気に書き上げました。
[ 2010/04/28 22:53 ] [ 編集 ]
これは・・・!

もうSS書けないかな・・・。

何を書いてもコピーにしかなりそうに無い・・・。
[ 2010/05/01 21:37 ] [ 編集 ]
SS
かきましたっ
何とか形になったかな・・・^^;
アナゴさんの話のちょっと前の話ということで。
[ 2010/05/02 20:57 ] [ 編集 ]
ロドさん
同じ題材なのでどうしてもカブるところは出てきますが、
脚色次第で大きく化けるのですよ。
ロドさんの真骨頂、艦隊戦モノが読みたいです(・▽・

ミッタマさん
読みましたっ
なかなかいい空気を醸し出してますねぇ
秘書視点で外伝が書けそうだなぁと思ってみたり
[ 2010/05/04 23:19 ] [ 編集 ]
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