登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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帰れる場所があるから ~前編~

薄曇のセビリアは、昨日から緊迫した空気に包まれていた。
市場は休日のように静まり返り、人通りもほとんど無い。広場に集う人たちもどこか緊張感がある。酒場はというと、これまた妙なことに士官や貴族が溜まっていて、市民が堂々と酒を飲める雰囲気ではなかった。こんな状況で人々が声を押し殺して噂するのは、昨日突如として沖に現れた大艦隊のことである。

2日前、枢機卿の発した港湾戒厳令により、すべての艦船の入出航および沖合いの停泊が制限されはじめた。沖ではイスパニア海軍のフリゲートが巡視を始め、桟橋では衛兵の鋭い目が光っていた。その邪魔者が一切いなくなったかのような港の様子は、まるで大艦隊を迎え入れる準備のようである。皆がそう感じ始めた昨日の昼頃から、1隻また1隻と戦艦が寄港をはじめ、沖の一角に停泊するようになってきた。帆も艤装もまるで統一感の無い戦艦が徐々にひとつの船団になってきた頃、海峡方面から新たな船団が現れた。黒鯱の紋章を掲げた大型の戦艦や、オスマン海軍から接収したと思われる巨大なガレーまで、数は優に30隻を超えている。
船団を率いていたのはバルタザールであった。彼は上陸するとまっすぐ酒場へ向かった。


「おぉ、黒鯱の旦那の御出座しだ」
酒場にいた身なりのいい男性が、バルタザールを見て大きな声をあげた。
「早かったわね、サルミエントと一緒に着くと思っていたのに」
異国の軍服を身にまとった女性も彼の方を見て、ジョッキを掲げた。
「ふん、ディエゴのような鈍足の守銭奴と一緒にされては困る」
バルタザールは酒場の一番奥へ進み、彼のために空けてあったかのような席につき、続けざまに言った。
「それで、貴様らの精鋭とやらはどこにいるのかね。港には旗艦ばかり並んでいたようだが」
「近海で待機中だ。十隻程度の艦隊だが、戦艦が入ってるもんでな、港じゃ大きな動きが取れないんだ」
「私の艦隊はヒホンに置いてあるわ。イスパニア領以外での待機を禁止するなんていうから、ちょっと遠くになっちゃったわ」
「俺らは高速艇が揃ってるんで、セウタ待機でも問題ないんですがね。しかし旦那、なぜマディラとかラスパルマスを使わないんです?」
「ポルトガル領はダメだ。今回の一件でどっちに味方するのかわからんし、仮にこちら側につくとしても我々の動きを知られるわけにはいかん。ラスパルマスについては・・・今のカナリア諸島はイスパニア領だと思わんほうがいい」
「ふむ、よくわかりませんが、私掠の活動が活発になってるってのと関係あるんですかねぇ」
ここに集まっている人々は皆、自身の艦隊を率いているらしかった。そしてそれらを隠密裏にどこかへ集結させているらしい。
「ところで、現在までの艦隊総数と船種を知りたい。誰かまとめてあるか」
バルタザールはテーブルを囲んでいる面々を見た。
「こちらに取りまとめてあります、どうぞ」
初老の軍人が差し出した1枚の紙を手に取り、彼はそれをじっと睨みつけた。
「商船はどうしても補給艦にせねばなるまい。中型船も敵の戦術如何によってというところだが、戦列に加われるのは旗艦も含め50隻といったところか」
「精鋭といっても専業の軍人なんていませんからねえ。50隻戦えるだけでも善しとしましょうや」
「現地の敵勢力だけであれば余裕で駆逐できるであろう。問題は敵方にどれだけの援軍がつくのかということだ」
バルタザールはこの精鋭の数を以ってしても、まだ不安があったのだ。


その不安は的中した。
翌朝、未だ数名の軍人が酒場に残る中、もう1人の待ち人がやってきた。しかも最悪の情報を持って。
「遅れてすまなかったな。悪いニュースを聞いたんで、それの裏を取っていてな・・・」
「詳しく話せ、ディエゴ」
「・・・ポルトガル海軍が現地に向けて出航準備を整えている。しかも最悪の水先案内人付きでだ」
「最悪の・・・まさかマルナードか」
バルタザールは椅子から立ち上がり、ディエゴに尋ねた。彼が大きくうなずくのを見ると、再びゆっくりと椅子に腰掛けた。
「くそっポルトガルめ、マルナードなんぞと手を組みおって。・・・マルナードなどと・・・マルナードめ・・・」
バルタザールはうわごとのように男の名を繰り返した。
「マルナードといえば、南カリブを拠点としてイスパニアと競り合っているという、あの悪漢のことか」
隣にいた男がディエゴに尋ねた。
「ああ、間違いない。他にも海軍の桟橋で厄介な連中を何人も見かけたな」
「厄介な連中、ということはその裏に例の高官がいると考えていいか」
バルタザールはディエゴと目を合わせることなくつぶやいた。
「ああ、おそらく他の国でも問題になっている連中もいるんだろうな。どうするバルタザールよ、場合によっては、いやこれは確実にイベリアが火の海になるぞ」
「・・・そうなる前に、そこまで泥沼化する前に、なんとかしてみせるさ」
「しかし、こちらもすぐに出航準備を整えないと手遅れになる。現状の戦力で勝算はあるのか?」
「ある、とは言い切れん。だが援軍の当てはある。我々の戦力をも凌駕する疾風の精鋭を知っているのでな」
「ありえん。そんな即応の精鋭など、海軍をおいて他には・・・、まさかイスパニア海軍を?それともシーゴイセンに泣きつく気か?」
「ディエゴ、お前は商会というものをどのように考えているのだ。サルミエントのように交易で財を成すだけが商会ではないのだ。時には国の為、仲間の為、あるいは隣国の友人の為に戦ってこそ、その集団の真価が問われるのだ」
「そんな、香辛料を弾薬に積み替えるような商会が――」
「あるのだよ。イスパニアにはそんな頼もしい商会があるのだよ、ディエゴ」
「ううむ、そこまで言うのならお前を信じよう。時間が無い、すでに集まっている精鋭の指揮は一旦私が執る。お前は早く援軍要請に行ってこい」
「そうさせてもらおう」
バルタザールはスッと立ち上がると、入り口に向かって歩いていった。カウンターに並んだ酒瓶の中にある、琥珀色の1本に目をやると、振り返ってディエゴに言った。
「ひとつ聞いておこう。お前はポルトガル人として、こちら側にいて平気なのか?」
「くだらぬ質問だ。今回の一件は決して自国領土の拡大というシナリオでは無いようだ。それに、商人として自由貿易を守るのに何の遠慮がいるというのだ」
ディエゴはニヤリと笑った。バルタザールは顔色を変えず、そのまま酒場を後にした。





ディエゴ・サルミエントとバルタザール・オリベイラが手を組んだ。そしてセビリアに集まる世界の傭兵たち。
彼らはどこへ向かうのか・・・。
世界で今何が起きているのか・・・。
ポルトガル海軍の思惑は・・・。
そしてバルタザールの言う援軍とは。

後編をお楽しみに。長くなったら中編を挟むかも。

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[ 2010/06/28 01:06 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(3)
ちょー楽しみになってきた。
[ 2010/06/28 18:53 ] [ 編集 ]
ワールドカップネタ?
楽しみに続編待ってます。
[ 2010/06/29 07:51 ] [ 編集 ]
W杯ネタではありません(・x・
イベリア全面戦争といえば、今夜まさにスペインvsポルトガルですねぇ。
[ 2010/06/30 02:04 ] [ 編集 ]
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