登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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帰れる場所があるから ~後編~

あれから数日後、例のポルトガル艦隊が出航したとの連絡が入った。斥候の知らせによると、行く先はカナリア諸島だということだ。後から判った事だが、このポルトガル艦隊は国家の意向にはまったく関係なく、反政府勢力に加担した軍人が動かしたものであり、イベリアに緊張をもたらす最悪の事態は避けられることになった。


バルタザールもすぐさま追撃体制を取るべく、全軍に発令した。
「ポルトガル海軍がカナリアに向かっている。おそらく一旦補給を行った後、南米北岸付近まで一気に移動するつもりだろう。そうなると向こうの士気が一気に上がって戦いにくくなる。そうなる前に我々も手を打とうと思う」
港に集まった各国の傭兵艦隊、黒鯱傭兵艦隊、サルミエント艦隊、一部のイスパニア海軍、そしてバーボン艦隊それぞれの提督は、バルタザールを取り囲むようにして指示を待った。
「まずイベリア北部で待機中の艦隊はアゾレスへ寄港、偵察、補給を兼ねてナッソー、ハバナへ向かってくれ。ハバナもナッソーもイスパニア海軍のカリブ方面隊の勢力下にあるため、航路上の散発的な戦闘のみと考えて良いだろう。セウタ方面の高速艇はすでにカリブへ向けて出発してもらっている。他の艦隊はマディラ偵察の後、それぞれサンチアゴ、ジャマイカへ向かってくれ。状況に応じてサントドミンゴへの退避も許可しよう。サルミエント艦隊は直接サンファンへ、バーボン艦隊は直接サントドミンゴへ向かってくれ」
「こりゃ豪華なカリブ旅行になりそうですな。手土産にマスケット銃を持ち込んでも構いませんかい?」
「ふん、随意にするがいい。だが敵方に拿捕されて接収されるようなことがないように頼む。心配な奴はシェリーかウィスキーにしておくんだ」
「了解しました旦那。で、現地で攻勢かけるのはいつぐらいになりそうですかね」
「我々はカナリアでポルトガル海軍と一戦交えた後、サンファンへ急行し補給に入る。そしてセントルシア制圧に向う際、各方面の艦隊を南カリブへ侵攻させる。予定は40日後だ。黒鯱の機動力を甘く見ていると戦列に加わり損ねるから、貴官らは十分注意してくれ」
「へい、肝に銘じておきますよ。んじゃそろそろ俺らは出ますんで、またカリブで会いましょうや」
提督の一人が部下を引き連れて桟橋に向かった。
「では我々も出航するとしますか。黒鯱やバーボンの疾風っぷりはよく知ってますんでね、ほんとに遅れてしまうかもしれません」
別の提督もバルタザールに手を振り、自分の船へと向かった。他の提督たちも互いに武運を祈りつつ、出航準備に取り掛かっていった。


「さて、我々も出航するとしようか」
数日前までは商会長と呼ばれていたその男は、大艦隊が出航するのをじっと見守っていた。
「ところで、一緒に行って本当に良かったんですか?」
男は隣にいた小柄な女性に話しかけた。
「いいんですよ。私の剣術が役に立つチャンスなんて、そう滅多にないですし。それに、ここにはいつでも帰ってこれますからね」
女性は抜き身の刀を目の前に掲げて見せた。
「さすが探検隊の編隊長を務めただけのことはある」
男はやれやれといった表情で、彼女の刀を見つめた。
「会長こそ良かったんですか?」
「ええ、もちろん。というより、私は行かなければならないんですよ」
「バーボンハウスの会長として黒鯱艦隊を支援する、ですか」
「理由は3つあります。1つは黒鯱艦隊の支援、もう1つはこれ」
そう言うと、一丁のマスケット銃を取り出した。あちこちひどく錆びているが、細かい細工がされている美しい代物であった。
「この銃はバーボンハウスにとっての宿敵がいるところへ導いてくれる。今回はこいつがカリブへ行きたがってるんです」
「ふうん、じゃあ今回の敵方に、バーボンハウスの宿敵がいるってことですか」
「おそらくは。それが3つめの理由、船長です」
男は銃を海に向かって構え、話を続けた。
「船長が単独でカリブへ向かったのは、イスパニア内部の人間が関わっていて、バーボンに迷惑をかけたくないから、という理由でした。私たちも一時脱退したことによって、バーボンには迷惑はかからなくなった。それに、イスパニア内部の人間、不正を働く政府高官、カリブ、この3つが繋がるのは至極当然のこと。つまり今回は船長の支援という意味も含まれています」
「なるほど、言われてみればそうですね、すべてが繋がる。これでますます暴れる理由ができたってことですね。…あ、そういえば船長は単独で行ったんじゃありませんよ、一人忘れてます」
「・・・?」
「見敵必殺の若きイスパニア軍人が随伴したじゃないですか」
刀をひるがえして、彼女はニヤリと笑った。
「ああ、あの競走馬のような名を持つ男か。いかん忘れていた。彼も今頃がんばってくれているだろうか・・・」



さらに数週間後、先行してカリブ入りを果たした高速艦隊からの情報が、サントドミンゴの軍営に届けられた。
「船長、バーボン艦隊がこちらに向かっているそうです!」
若い男が大きな声をあげた。
「え^^;」
船長と呼ばれた男は、驚きの表情を見せた。
「会長以下数名が商会を脱退、ってことはバーボン艦隊と呼べないんでしょうけど、南カリブ掃討作戦に参戦する、って伝令文に書いてあります」
「数名ってことは他にもいるんですか。…やれやれ、バーボンらしいといえばバーボンらしいですね^^;」
呆れたというか感動したというか、なんとも言えない表情を浮かべ、2人は顔を見合わせて笑い合った。
「おや、なんか楽しそうだな」
爬虫類をモチーフにしたアイアンヘルムを小脇に抱えた、褐色肌の長身の男が近づいてきた。沿岸の哨戒から戻ってきたらしい。
「いい情報でも入ったか?」
もう一人、虎の兜をつけた小柄な男も近づいてきた。若い男が持っていた伝令文をつまみあげると、内容を確認しはじめた。
「・・・ふふ。まいったな」
「これじゃあ我々がこっそり抜け出た意味がないというか・・・」
皆、顔を見合わせて苦笑いしている。
「会長もバルタザールに頼まれたんでしょうかね」
「まぁそうだろうな。こっちの情勢を知るわけがないし、知っていたとしてもここまでして支援に駆けつけることはないだろうさ」
「いやいや、船長がカリブに出撃したことと、今回の一件を結びつけて大義名分とした可能性もある」
「ふむ、いずれにせよ、バーボンハウスが正式に参戦したことになるな。いくら脱退したからといって、前会長という肩書きを背負っているんだ。おまけに我々もいる。負けたら商館没収どころではすまされないぞ」
「まったく、帰るところを無くさないでくれとお願いしたのに…」
「弱気ですね船長、勝てばいいんですよ。勝てば何の問題もないんです。大丈夫、味方は着々と集結しています。我々の手でカリブから悪を追い出しましょう!」
「若いのに言ってくれるじゃないか。軍人にしておくのがもったいないぜ」
「まったくだ。なんでバーボンハウスの若い奴らはこんなに義理堅いんだろうね」
「それは…、それは、船長や副会長のような古参の背中を見て育ってきたからですよ。愛国心というか、愛郷心というか、国粋とは違う、何か心地良いものを感じているんです。私や会長だけでなく、商会員みんながあなた達の影響をすごく受けてるんだと思います」
「そうか・・・、もう商会の古参と呼ばれる歳になってしまったか」
「では古参の背中とやらを、カリブでもしっかり見せつけてやりましょうかね」
「そうですね。せっかく商会長と副会長3人が揃うんだから、裏バーボンハウスでも立ち上げますか」
「ははは、そんなことしたら留守番組に怒られるぞ。せめてのーきん部くらいにしておかないと」

4人の笑い声はカリブの潮風に乗って、軍営中に広がっていった。
「なんだあの連中は」
「ん? ああ、セビリアから来た傭兵ですよ。なんていったかなぁ、商館持ちの老舗にいた奴らです」
「…ああ、バーボンハウスか。あの義勇軍気取りめ」
「おい、仲間に向かってその言い方はないだろう」
「いやいや、これは誉め言葉さ。奴ら昔っからそういうところがあってな、以前ギリシャ近海が無法地帯だった頃、何の見返りも求めずに海賊討伐をやってたのもあいつらの同胞だった。今だって、香料諸島の向こうまで行って海賊討伐をしてるそうじゃないか。海賊だった俺としては面白くないが、まぁ何というか、俺が言うのも何だが、気持ちのいい連中さ」
「へぇ、まるで小説に出てくる英雄艦隊みたいですね」
「そうだな。俺も陸に上がったらあいつらの戦記でも書かせてもらおうかな」
「ネタは自身の討伐経験ですか、ははは」
「まあそれもあるが、今回の一戦もきっと伝説になるぜ。お前らもあいつらの戦いをよく見ておくんだ。もっとも、あいつらに追いつけたらの話だがな」


サントドミンゴの海が夕焼けに染まっている。
願わくばこの風が、カリブに平和と繁栄を与えんことを。






明日にしようと思ったけれど、一気に書き上げちゃいました。
副会長が内緒でカリブ遠征していた、というオチは決まってました。
ニヤリとできる小ネタをもっと入れたら良かったかも。

まだまだ続きの書けるお話ですが、それは誰かが戻ってきたときに書くことにしましょう。


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[ 2010/07/05 02:06 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(2)
火薬の臭いに触発されたか。
終盤はなるほど~と唸ってました。
なんかこうやって書けるのが羨ましい。

マブラヴオルタ完走しました。

そなたに心よりの感謝を。
[ 2010/07/08 15:37 ] [ 編集 ]
おつさまでした。
いろいろ学べたとしたら、薦めた甲斐があったというものです。
[ 2010/07/10 01:32 ] [ 編集 ]
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