登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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帰れる場所に -財閥・船長編-

地中海に涼しげな風が吹き始めた。うだるように暑かった日々が懐かしく思えるほど、海風が肌に冷たく触れていく。
セビリアの街は相変わらず人の往来が激しく、隣国の本拠地にも劣らぬ活気の良さがある。特にここ最近は、南蛮貿易による物品の流入が激しく、見慣れぬ交易品や変わった装束を目にする機会も増えた。

そんな街の様子を横目で見ながら、赤銅髪の男が3番商館へと入っていった。

「お帰りなさいませ、会長」
机に向かっていた商館秘書が顔を上げ挨拶をした。
「うむ」
会長と呼ばれた男はそのままカウンターへと向かった。私がやりましょう、と秘書があわててこちらへ来るのを手で制し、棚に入っている琥珀色の瓶を取った。
「君もやるかい?」
男がグラスを軽く振ってみせた。
「いえ、私は仕事が・・・まだこんなにありますので」
秘書は机の上の紙の束を指差した。会長は軽く肩をすくめると、グラスに酒を注いだ。
「ずいぶんと忙しそうじゃないか。そんな束になるまで放っておいたわけではあるまいに」
「例の南蛮交易の影響ですよ。商会の皆さんもいろいろ仕入れていらっしゃるもんで。管理局も市場の動向を把握したいらしく、各商館の秘書は明細の提出が命ぜられてますんでね、自然と書類も増えるってもんです」
「そうか・・・それはご苦労だな」
男は酒を一口飲むと、ふぅとため息をついた。
「最近ウィスキーはお召し上がりにならないんですね」
「ああ、なんとなくラムにしたい気分なんだ。みんなが帰ってくるまでウィスキーは控えようかなと思って」
「そうですか・・・みんなどうしてるでしょうね・・・」
「南カリブで拮抗してるって話は聞くんだが、それ以上は黒鯱の緘口令で聞き出せないんだよな・・・」
「そういえば出航所役人から、護送艦隊が一旦帰港するらしいという噂を聞きました」
「ほぉ、誰か捕らえたのか」
「セビリア入港って聞きましたので、イスパニア高官かあるいはその部下じゃないかと思うんですが、詳細まではちょっと」


数日後、噂どおり護送艦隊がセビリアに入港した。商船6隻からなる護送艦隊と、随伴の護衛艦2隻だ。
出航所には人垣ができ、下船してくる人々を出迎えている。どうやら捕らえられたのは、初期の戦闘で捕虜となったカリブ海賊の副長クラスの人間らしかった。

この日も会長はセビリアにいた。書庫で学者と南蛮の美術品について語り合っていたが、護送艦隊が到着したという話を聞くと、話を早々に切り上げ、出航所へと向かった。数ヶ月前に出撃した同胞の状況が聞けないかと思ったからだ。
港は多くの人で賑わっていた。護送艦隊には捕虜以外にも、カリブの名産品が満載され、それらを交易所へ運ぶ軍人と、我先に取引しようとする商人とで、ちょっとした行軍状態になっている。よく見ると、近くに停泊中の大型商船からも交易品らしき荷物が山ほど降ろされている。会長はその見覚えがある商船をじっと見つめていた。
「へぇ、護衛艦っていうからどんな立派な軍艦かと思ったら、大型商船じゃねえか」
会長の近くにいた人夫が言った。
「あれが、護衛艦だと?」
会長は人夫に尋ねた。
「ああ、そうでさぁ。この船と、あっちの黒鯱のフリゲート、それとあの砲艦が護衛なんだそうで」
「ということは、護送艦隊は6隻ではなく5隻ということか。それで護衛艦が3隻と」
「まぁそういうことらしいですぜ。・・・ところで、旦那は3番商館の会長じゃねえですかい?」
「ああそうだが、それが何か」
「へっへっ、だったらあの船に見覚えがあるはずでさぁ」
人夫は大型商船を指差した。
「ああ、確かに見覚えはある。だが護衛艦ってことは、以前どっかで見た黒鯱の船だろう」
「いやいやそいつぁ見当違いってもんでさぁ。黒鯱が何で商船なんか持ってるんです?」
「・・・うむ、言われてみれば確かに」
「でしょう、ということは・・・おっと、噂をすればなんとやら。あちらの令嬢を御覧なさい」
指差す方向に、一人の貴婦人がいた。何人かの将官と話をしている。
「・・・ああ、財閥の船か」
会長はニヤリと笑い、彼女のほうへ歩いていった。


「ということは何? この交易品はイスパニア政府が接収すると?」
「ああ、当然だ」
「ちょっと信じられない! これは私のお金で買った交易品よ? 戦闘中の戦利品だったら話はわかるけど、正規の手続きで買い付けた品物までどうして差し出さなきゃならないの?」
「けっ、たかが傭兵の分際で。カリブから艦隊組んで戻ってきたのは交易のためじゃねえんだ。捕虜の護送が目的だ。それなのになんだお前は、護衛任務に商船で当たるとは。私欲を優先しやがって!」
貴婦人と将官が何事か言い争っていた。
「やめんか貴様、令嬢相手に何をわめいている?」
男が割って入った。
「ん、誰だ貴様は?」
将官が男を睨みつけた。
「俺か、俺はあの船の船長だが」
男は後ろに停泊している黒鯱の紋章を掲げたフリゲートを、親指で指差した。
「なっ、こ、これは失礼、任務お疲れ様でございました」
「うむ、それで、今何を言い争っていたんだ?」
「いえ、ちょっとした問題があって・・・」
「ちょっとした問題? そんなのは後でいいだろ。我々は忙しいんだ、取り急ぎ書類にまとめて本部か王宮に回してくれればいい。あとでじっくり読んでやる。わかったな?」
「いえ、ですが・・・」
「文句があるのか? ならばそれもまとめて書類に書き足しておけ!」
男は将官に吐き捨てると、下船を終えた部下に告げた。
「よし、お前らもう一仕事だ。お嬢の積み降ろしを手伝ってやれ。交易所への手配もな!」
了解でさぁ、という威勢のいい声が港に響いた。
将官はその声に圧倒され、すごすごとその場を立ち去った。
「助かったわ、ありがとう提督」
「なあに、礼はあっちの旦那に言いな」
視線の先には赤銅髪の男が立っていた。
「まぁ、久しぶりだこと」


会長と令嬢は酒場へとやってきた。
「いらっしゃい、ご注文は・・・っと、今日は久しぶりにアレですかな?」
マスターがいたずらっぽく笑ってみせた。
「さすが、わかってらっしゃるわね。ただいま、マスター」
「お帰り、お嬢さん」
2人の前に琥珀色のグラスが置かれた。2人は顔の前にグラスを持ってくると、深く息を吸い込んだ。
「久しぶりだわ、この香り」
「ああ、私もこれは控えてたもんでね、久しぶりなんですよ」
「そう、それじゃ乾杯しましょ」
グラスに軽い音を響かせ、2人は喉を潤した。
「・・・ふぅ、ところで、なんであなたが護衛艦に?」
「特別な理由はないわ。ドミンゴに進駐してる軍人で、適当な人が選ばれたっていうだけのこと」
「なるほど。あの黒鯱の人は?」
「バルタザールの側近の部下よ。報告を兼ねての帰国ですって」
「ふむふむ、建前上は正規軍を提督にってところですかね」
「ええ。それよりさっきはありがとう。もう少しで交易品全部接収されるところだったわ」
「いえいえ、たぶん言いがかりだろうと思って、彼に仲裁をお願いしただけですよ」
「まぁ戦況が拮抗してるんで、歓待されないだろうって予想はしてたけどね。ちょっと賊軍の抵抗が激しくて、バルタザールも攻めあぐねてるわ」
「では、またすぐに戻るんですか?」
「いいえ、私はもういいわ。ろくな報酬ももらえないし、南蛮にもいけないんじゃつまらないし」
彼女はペロっと舌を出しておどけてみせた。
「では、バーボンハウスに戻ってこれますね」
「うん。帰ったら会長を探さないとって思ってたとこだったから、ほんといいタイミングだったわ」
「では後で入会申請――」
「あ!!」
彼女が急に大声を上げた。
「ど、どうしました!?」
「キャプテンも戻ってきてるんだった。さっきのもう1隻の護衛艦、あれキャプテンの船よ」
「なんですって!?」
酒場の扉が開いた。一人の男が2、3歩中に入ると、きょろきょろとあたりを窺っている。彼女が彼を指差した。会長もそちらを見る。よく見知った、とても懐かしい顔だった。
「ごめんキャプテン、あなたも一緒だったこと、たった今思い出したの」
彼女が男に向かって言った。
「え^^;」
男は参ったなあという感じで頭を掻いた。
「おかえり、キャプテン。一杯やりましょう」
会長はグラスを掲げた。





リリさんとヌパロフ氏が帰ってきましたので、その記念に。
私かっこよく書きすぎたか^^?

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[ 2010/10/11 17:59 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(2)
船長の出番がナイデスネ・x・
[ 2010/10/12 17:14 ] [ 編集 ]
長くなりそうなので切り上げてしまいました^^;

ロドさんもプチ復帰だそうで。
前に書いたSSでは船長とロドさんは一緒にカリブ遠征へ行ったことになってるんですよね。
う~む、これで後編が書けそうな予感。

そういえば船長の船倉に入れておいたバーボンはどうしたんだろう(ゴ゚ω゚)
[ 2010/10/13 01:40 ] [ 編集 ]
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