登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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バルト海にて -黒船・序章- (中)

坂道を駆け下りる間も砲声は大きく、よりはっきりと聞こえていた。
ただその直後に聞こえる衝撃音が、桟橋や建物にぶつかる音ではなく海面への着水音であることは、少なからず俺を安心させた。

南門をくぐる頃にはもう町は臨戦態勢に入っており、海賊の上陸に備えている。
俺はそのまま一直線に港への道を駆け抜けた。





港に着くと海賊はまだ沖にいた。
あの位置取りだと狙いは港湾封鎖、上陸ではなく入出港の商船拿捕を狙っているのではないだろうか。町からの迎撃が無いことをいいことに、悠々と構えていやがる。

「旦那!」
商船隊のキャラベルは無事接岸しており、ちょうど船員の下船と退避が行われていた。
「おお、無事だったか。被害状況は?」
「へい、地元の商船が一隻捕まって、その間に何とか逃げ帰ってきやした。申し訳ねえ」
「気にするな、仕方ないことだ。お前達は怪我ないか?」
「へい、幸い右舷のケツに一発かすっただけで、問題ありやせん」
「そうか、では疲れているところ悪いが、すぐ出航準備だ」
「へ?」
「やつらを迎え撃つ。すぐ出港準備にかかれ」
「いやいやいや旦那、そいつは無茶だ。うちの船にはまともな大砲なんて積んでやせんぜ。ましてや戦術に長けた乗組員なんて・・・」
確かにそうだ。こんなキャラベルで海賊ども(ピンネース級が3隻)を迎え撃つのは無謀すぎる。俺もちょっと頭に血が上っていたな。
「そうだな、わかった。お前らは退避していろ。別の船を探す」
「だ、旦那あぶねえですから一緒に逃げやしょう!」
船員の制止を振り切って、なんとか応戦できそうな軍船を見つけようとした。軍船でなくとも良い、大型船であればなんとかできるはずだ。

俺の目に飛び込んできたのは、港の端のほう、小さな岬からせり出した桟橋に泊まっている一隻の船。マストの上に黒い十字旗を掲げた鉄張りのコルベットだった。騎士団の軍艦、ここにいるってことはドイツ騎士団所属か。部外者の俺が乗り込める可能性は低い。だが他に方法はない、俺は岬へと急いだ。



「貴様、ここは立ち入り禁止だ。速やかに立ち去れ」
案の定、手前で見張りをしていた衛兵に止められた。黒い十字を染め抜いた純白のサーコート、その下に見える象嵌の軽装鎧。桟橋にいる何人かも同じ装束だ。騎士団をこれほど間近で見る機会はほとんどないが、やはり高貴な一団である。
「もう一度言う、ここは立ち入り禁止だ。用が無いなら速やかに立ち去れ」
「頼む、この船に乗せてくれ。迎撃に行くんだろう? 俺も戦いたいがまともな船が無いんだ」
ダメ元で頼むしかなかった。こういうときにはこういうとき専用の高貴な言語があるのだろうか。帰ったらあの娘に聞いてみよう。そんなことを考えながら、俺はスペイン語で話しかけた。下手に使い慣れない英語やポルトガル語よりはましだろう。もっとも、スペイン語が通じればの話だが。
「俺はイスパニアの政務でハンザの視察に来ている。世話になっているボヘミアの商船隊がやつらの襲撃に会い戻ってきた。さっき入港したキャラベルがそうだ。で、このままだと俺の政務も商船隊の交易もできない。したがってやつらを迎撃し、いち早く治安を回復する必要がある。頼む、協力してくれ」
道理が通っているか不安ではあるし、そもそも通じているかわからなかったが、俺は一通りまくし立てた。
「ふむ、お前の言い分はわかった。乗せてやろう、と言いたいところだが残念なことにこの船は本件に関して出港の予定はない」
「な・・・なぜだ、他に戦える船は無いんだぞ!このまま指くわえてやつらの行動を眺めてろってのか!」
「貴様に事細かな説明をする義理はない。さあ、わかったら速やかに立ち去れ」
俺はついカッとなって、衛兵の言葉が終えるか終えないかのタイミングでサーベルを抜いて衛兵の喉笛に突きつけた。いやそのはずだった。しかし俺の右手は左腰の中空を彷徨ったまま、何も掴んではいない。サーベルは・・・宿に置いてきたんだった。
「ほぉ、剣を抜くつもりだったか。しかし丸腰だということを忘れていたようだな。それともそのダガーで勝負するかね」
衛兵は反対に自らの背中に手を伸ばすと、禍々しい細工を施した剣を引き抜き、構えた。

「騒がしいぞ、何事だ」
衛兵の後ろで声がした。
「はっ、不審な男が居りますゆえ、お下がりください」
衛兵は首一つ動かすことなく、後ろにいる声の主に答える。声の主は答えることなく、カチャカチャと金属音を立てながら近づいてきた。その顔には、見覚えがあった。
「おや、貴殿はどこかでお会いしたことが・・・。ああ、昨日役場への道を教えていただいた」
その男であった。昨日と同じ黒装束、ただ今日は黒いレイヴンジュストコールと、両手足には黒鉄の防具。頭には大きな白羽のついた黒いバイコルヌが乗っている。誰がどう見てもこいつはお偉いさんだということがわかる。彼は衛兵に剣を収めさせると、俺の前に立ち止まった。
「話をお聞かせ願いましょうかな。Die Ritter von Hansa.」



「なるほど、それでこの船に目をつけたわけですか。しかし先ほど衛兵からもお聞きになられたかと思いますが、この船は本件に関して出港することはありません」
彼も先ほどの衛兵と同じことを言う。訳を聞いてみると、そのうちわかるとしか答えてくれない。さらにはあきらめて引き上げようとする俺を、ここでしばらく見ていろと促す。まったくわけがわからない。

小半刻も経たないうちに、にわかにあちこちが騒がしくなった。黒装束の男が望遠鏡で沖を睨んでいる。俺は何もできず、ただその場に立ち尽くしていた。
「・・・ようやく来たか」
男はつぶやくと、俺に双眼鏡を渡してきた。男の睨んでいた方向を覗いてみる。海賊のいるさらに沖の方、先鋭が見えた。が、その異様な雰囲気に俺は息を呑んだ。この距離でもその大きさがわかるほどの巨大さ。ガレオンの2倍はあるだろうか。戦列艦にも引けを取らない、しかし高速船の様相を呈したそれは、みるみるうちに港へ近づいている。

「・・・・・・クリッパーか?」
俺の知る限りでは、あの船影はクリッパーのものに似ていた。しかし何かが違う。
「原型はクリッパーと聞いています。しかし設計から艤装に至るまでまったく異なるものです」
男の解説を聞きながら、俺はレンズの先の船影に釘付けになっていた。その船体は・・・漆黒に包まれていた。主帆から船首像、船体に至るまですべてが漆黒だった。まるでお伽噺に出てくる黒真珠号のように。

船が転舵をはじめた。予想に違わず旋回速度が並ではない。こちらに向けられた左舷からは、それほど多くはない砲門が顔を出している。海賊船との距離は定かではないが、ペリエ砲でも届かないであろう距離と見ていいだろう。
だが転舵が終わるとその砲門は鮮やかな閃光を放った。青白い光跡を描きつつ、その先端は放物線を描いてまっすぐ海賊船へと突き刺さる。一瞬の沈黙の後、海賊船は大きな火柱を上げた。続けて2発、3発と黒船から砲弾、というべきか雷というべきか、とにかく攻撃的な何かが飛び出した。それらはほぼ的確に海賊船を捉え、着弾のたびに大きな火柱を上げ、やがて弾薬庫に引火したかの如く派手な爆沈を披露した。

あとの2隻の海賊船も、転舵する間もなくあっという間に沈んでいった。それを見届けると黒船は静かに海面を滑り出し、瞬く間に水平線のかなたへ消えていった。






陽が随分と傾き、商館内が薄暗くなってきたのをみると、秘書はランプや燭台に明かりを灯して回った。
「で、その後どうなったの?」
透明な角瓶を抱えたまま、褐色の娘が尋ねた。
「俺らがキャラベルで生き残った海賊の収容をしているとき、騎士団のコルベットは出航していったよ。結局その男とあの黒船との関係については聞けなかったけどな」
「その黒船ってのはいったいどこの国の船なんですかねぇ」
「俺も以前黒船と呼ばれる船の噂はカリブで聞いたことがあったんだが、特徴がまったく違うんだ。俺の聞いた話だとその船は大型のガレー船で、今回のようなクリッパー級ではないらしい」
「ワタシも聞いたことある。東南アジアで黒檀のような色をした大型船が交易所の商品丸ごと買い占めたって」
「私も黒船の話は聞いたことあります。幽霊船の派生かと思っていましたが」
皆、自分の聞いた話、目撃した話など、口々に黒船に関する噂を話し始めた。



明かりを灯し終わった秘書がテーブルの近くまでやってきて言った。

「黒船の本当の話、聞きたいですか?」

一同秘書のほうを振り向いた。秘書は軽く咳払いをして話を続けた。





-つづく-




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ちょっと長くなったので、続きはまた。次は短い予定。



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[ 2012/07/16 17:33 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(1)
今回は長編ですな。
続きすごい気になる・・・・

真相はよ!!
[ 2012/07/17 10:51 ] [ 編集 ]
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