登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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晦日、マルセイユにて

欧州の南蛮貿易熱もようやく一段落し、その熱を冷ますように冷たい風が港の城壁を撫でていく。あと半日もすれば今年も終わりを告げようとしていた。


今年は年明けを陸で過ごそうとする航海者が多く、港はいつにも増して賑わっていた。

人の集まるところには土産話が集まり、そして酒や肴も集まる。酒場に限らず、街の至るところで宴が始まりそうな、そんな年の瀬である。
マルセイユのパリ公爵別邸でも、貿易公社を中心とした年納めの宴が開かれ、欧州各地の商会や公社から多くの商人や高官が招待されていた。






「やはり私には少々場違いだな・・・」
赤銅髪の男が所在無げにあたりを見回していた。インジゴのドガリーヌとトリコルヌ、セビリアの商会で以前会長を務めていた人物である。彼の商会にも招待状が届いていた。本来であれば会長もしくは副会長が出席するのが通例ではある。だが、現会長は仮面を外さないことで有名だった。仮面舞踏会ではないと皆がいくら説得しても聞き入れなかったため、止む無く代理として前会長が赴くこととなった。ちなみに副会長は本国での執務が終わらず、参加を見送っている。

「参ったな・・・マリーはまだかな」
マリーとは彼の組合に所属している仕立師だ。彼はこの手の宴を苦手としていることもあって、晩餐会やら舞踏会の作法を一通り心得ている彼女を助っ人として呼び寄せていた。マルセイユ港で用事を済ませてから来るということになっているのだが、まだその姿は見えない。

と、主賓等が集まっているあたりに、見慣れた人影を発見した。孔雀の羽をあしらった黒いドレス、ターコイズを散りばめた金のティアラ、まるで主賓のように着飾ってはいるが、紛れも無い彼女である。彼女のほうも彼に気づいたのか、周りの近衛に何事か告げると、一人でこちらに近寄ってきた。
しかしよく見ると、何かが違う。マリーはノーザンライトの髪色だが、今近寄ってくる彼女は黒髪だ。しかも完璧な漆黒である。彼女のほうもこちらに近づくにつれ、怪訝そうな表情に変わっていった。
「・・・あ、失礼。待ち人かと思ってしまって」
赤銅髪の男は、目の前まで来た彼女に向かって言った。
「・・・あ、いえ、こちらこそ。私も待ち人かと思ってしまいまして」
黒髪の女性も同じことを言い、そして続けた。
「私、そのお待ちの方に似ておりましたか?」
「そうですね、髪色以外は。彼女は青い髪でしてね。顔と背格好はあなたによく似てるんですよ」
「そうだったんですか。私もあなたを見間違えてしまいましたわ。私の待ち人は黒髪なんですの。ただお顔立ちもお髭の蓄え方もそっくりでしたので」
「それはそれは。お互いそっくりな待ち人がいるなんて、面白いお話ですね」
「うふふ、本当ですわね。ところで、まだあなたのお名前を伺っておりませんでしたわね」
「失礼、私はセビリア3番商館バーボンハウス会長の代理で参りましたアナーキー・ゴードンと申します」
「ゴードン様ですね。はるばるお越しいただき光栄です。私はパリ爵家皇女マリー・ド・セレーネと申します」
「こ、皇女であらせられましたか。大変失礼いたしました!」
平伏す男をあわてて制し、彼女は言った。
「皇女というのは内緒ですよっ。この中で知っているのはマルセイユ爵家の者と一部の近衛だけですから」
「そ、そうですか。いやぁでもびっくりしました。マリー様とおっしゃるんですね。実は私の待ち人もマリーといいましてね」
「あら、顔が似ているだけではなく、名前は同じでしたのね。その方もセレーネ姓でいらっしゃったり?」
「いえ、彼女はマリー・ゴードンといいます。私の遠い親戚みたいなもので、仕立師をしております」

それから2人は他愛も無い世間話を続けた。赤銅髪の男も彼女の出自に窮することなく話をできたのは、自分でも不思議であったようだ。
しばらくして、大広間の壁に飾られていた無数の鐘が何かの曲を奏ではじめた。定刻を知らせるチャイムのようだ。
「そろそろ私たちの待ち人も来たかもしれませんわね。玄関ホールのほうへ行ってみません?」




その鐘が鳴り響く少し前。公爵別邸の前で一人の青年が困り果てていた。
「ですから、マリー殿に招待いただいて参上したと申し上げているのです」
「申し訳ありません。招待状をお持ちでない方は例外なくお通しすることができませんので」
「招待状など受け取ってはおりません。招待いただいた旨の手紙は訳あってお見せできないのですが。どうかマリー殿にお取次ぎをお願いできませんか」
どうやら衛兵と押し問答を繰り返しているようだ。黒基調のダブレット、白く大きな十字が刺繍された漆黒のマント、羽つきの黒いボネ、そして黒い髪と黒い瞳。非武装時の騎士団を思わせる格好をした彼は、衛兵とのやりとりに疲れたのか、門の前から立ち去ろうとしていた。

「あれ?何してるんですか?」
立ち去ろうとした彼の目の前に、一人の女性が現れた。山繭のような薄緑のドレスに純白のショールを纏い、青い髪に乗せられた東洋の髪飾り。彼のよく知っている人だった。いや、何か違う。
「あ、あれ?マリー殿・・・ではないですよね?」
彼は恐る恐る尋ねてみた。
「え・・・?えっと・・・はい、マリーですけど・・・。組合長・・・ですか?」
「いえ私は・・・広域遊撃隊の。えっと、マリー殿です・・・か?本当に」
「あ・・・えっと、隊士の方でしたか。すみません人違いをしてしまったようで」
「本当に・・・マリー殿・・・ですか?爵家皇女の」
「え?いえ・・・皇女ではありません。名前はマリー。マリー・ゴードンといいますが、ロンドンの組合の者です」
「あ、そうでしたか。いや私が仕えていた皇女にそっくりだったものですから、つい。大変失礼いたしました」
「いえこちらこそ。あなたも私のところの組合長に似ていらっしゃったので、いきなりお声をおかけして申し訳ありませんでした」
「そうでしたか。いやぁでもびっくりしました。マリー様とおっしゃるんですね。実は私を招待してくださった方もマリーといいましてね」
「あら、顔が似ているだけではなく、名前は同じでしたのね。その方が皇女様でいらっしゃいますの?」
「ええ。でも招待状をいただいていないので、中に入れてもらえないんですよ」
青年はやれやれといった表情で肩をすくめて見せた。
「そうでしたか。あのもしよろしければ、私の随伴ということで一緒に入られてはどうでしょうか」
「本当ですか、そうしていただけると助かります。でもロンドンの組合宛の招待状では随伴は無理なのでは」
「あ、えっと所属はロンドンの組合ですが、招待状はセビリアの商館のものなんです。ここへは商会長の代理ということで参っておりますので」
「ほほぉ、そうでしたか。それなら問題ないですね。それでは姫、参りましょう」
青年はおどけて彼女の前に平伏した。彼女は微笑みながらくるっと踵を返すと、先ほどの衛兵のほうへと歩みを進めた。館の中からは定刻を知らせるベルの音が鳴り響いている。



館の扉が開き、2人が中へと入っていく。と、すぐに1組の男女と目が合った。
「・・・あ?」
「あら・・・?」
「まあ・・・」
「・・・おやおや」
まるで鏡を見ているような光景に、4人は不思議な気分になった。そして互いの横に本当の待ち人がいることに気づき、誰からともなく、笑い声がこぼれはじめていた。

「ようこそお越しくださいました。今宵は4人で楽しみましょう♪」


Have a good New Year

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本当はクリスマスを舞台に書きたかったんですが間に合わず。年末の宴ということで書いてみました。
最近本を読んでないので語彙が乏しくなってきた感があるなあ。。勉強しないと!
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[ 2012/12/31 14:59 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(0)
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