登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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続・セビリアの酒場から

ロンドンは今朝も霧に包まれている。

おそらく太陽も見えないであろう霧の向こうの空と、桟橋の鉄杭さえ認識できない海。そんなものの狭間にたたずむ船もまた、霧の向こうへと沈んでいた。
漁の準備をしている小型の漁船か、あるいは深夜に入港して荷降ろしに手間取っている商船の甲板灯か。その類の明かりが霞む中、血でもにじんだかのように空気が染まっている箇所があった。周囲の明かりに照らされているのは、真っ赤な船体をした大型のフリゲート艦だ。



「どうだ、準備は進んでいるか」
「進めちゃいますが旦那、時間が足りねえ!霧が晴れたら出航だなんて無茶ですぜ!」
桟橋には多くの人夫がいて、慌しく荷物の積み込みを行っている。
「無茶なのはわかっている。だからお前達に夜を徹して動いてもらっているんじゃないか。その分報酬ははずんでいる。遅れは許されないんだ」
真紅のドガリーヌを纏い、金色の鉄仮面をつけた大男が人夫に指示を出している。

その様子を酒場の壁に寄りかかって見ている者がいた。銀髪の若い女だ。少々苛立った表情を浮かべながら、琥珀色の液体が入った瓶を呷っている。
酒場からもう一人女が出てきて、先客と同じように壁に寄りかかった。鎧兜を身に付けた彼女もまた、手に透明な液体が入った瓶を持っている。
「おはよう。早いわね」
後から来た女が瓶を掲げた。前にいた女は無言のまま、その瓶と自分の瓶をコツンとぶつけてみせた。
「夕べから出航準備させてたのね。積んでるのは・・・何?弾薬?」
「・・・・・・」
「珍しいわね。あなたから硝煙の臭いがしなくなって久しいのに。何かあったの?」
「・・・私がドンパチやりに行くんじゃないのよ。組合長の指示で元の持ち主に返すの」
「へえ、誰から借りてたの?商会の人?」
「商会・・・にはもういないわ。元商会長だった人よ。イスパニアにいる疾風の、って言えばわかるかしらね」
「・・・・・・よく知ってるわ。しばらく会ってないけど元気かしら。って、戦艦を戻させるくらいだから元気なのよね」
人夫に指示を出していた大男が彼女達に気づいたのか、酒場のほうに向かって歩いてきた。

「船長、申し訳ない。物資の調達が間に合わず予定の数量には及ばなかった。急げば霧の晴れる時分には出航できそうだが、どうする」
「そう、まあ仕方ないわね。足りないものは向こうで揃えましょう。でもあれだけは忘れずにね。積み終えたら全員に朝食を」
船長と呼ばれた銀髪の女は、桟橋に運ばれた無数の酒樽を指差した。大男は彼女たちに一礼すると、再び人夫のもとへ戻っていった。

「今のあなたの副官?賢そうな人を雇ったのね」
「あら気づかなかった?今のリカルドよ」
「え・・・リカルドって、何年か前のパルマ襲撃海事で戦死した、あのリカルド?」
「そうよ。彼は戦死したんじゃなくて私が拿捕したの」
「驚いたわ。でもなんでまた副官なんかに?」
「尋問にも大人しく応じたし、言語にも精通している。あとは操船技術、地中海の現状把握、航路暗唱、海賊との調停役、どれを取っても人並み以上にこなす。海賊にしとくのはもったいない人材よ」
「へぇ、あの彼がねぇ・・・」



やがて霧が晴れはじめた。薄灰色の空と濃灰色の海、その狭間に鉛色の船体が浮かぶ頃、ようやく街も目覚めようとしている。
「そろそろ霧が晴れるわね」
「そうね。出港準備も終わったようだし、そろそろ行くわ」
「あ、そういえば聞いてなかったっけ。疾風の彼は戦艦駆り出してどこに行くんだって?」
「さあ、詳しいことまでは聞いてないけど、組合長は東地中海へ私用で、って言ってたわ」
「私用で戦艦・・・。ということは地方海賊でも狩る気かしら」
「さあどうでしょうね。何?気になる?」
「そりゃあ・・・ねえ。いろいろと・・・ほら、海賊狩りでバッタリ出くわしたら嫌じゃない?」
「ふうん、本当にそれだけ~?」
銀髪の女はニヤリと笑いながら兜の奥で泳いでいる女の目を覗き込んだ。
「な、なにさ」
「なんでもな~い。で、あんたはこの後どうするの?」
「そうね。大砲の買い付けが終わったら急いでアレクサンドリアに帰るわ。何かね、また決闘の申し込みがあったらしいの」
「また?モテるわねえあなたも。で、今のところ戦績は?」
「全戦全勝。負けてたら今頃イベリアかどこかの片田舎でハーブでも育ててるでしょうよ、うふふ」
「はははっ、確かに」
2人は声を上げて笑った。



霧のすっかり晴れたロンドンの港を、ゆっくりと進む赤い戦艦があった。赤く染められた帆には白虎の紋章。知る人ぞ知る「白虎野の愚連娘」が乗った船である。
「船長、ロンドン港を無事出航しました。ここから先セビリアまでの航路は私にお任せください」
金色の鉄仮面を外した大男が言った。
「うん。予定所要日数はどのくらい?」
「この季節ビスケー湾での風向きが不安定ですが、2週間もかからずに到着できるかと」
「2週間・・・。お届け先はイスパニアの疾風よ。そしてこの船はその方のもの。のんびりしてたら名前に傷がつくわ」
「御意。では10日でお届けいたしましょう」
男は余裕だと言わんばかりの表情でニヤリと笑った。
「よろしくね」
銀髪の女もニコリと笑ってみせた。




つづく?
誰かよろしく(ゴ゚ω゚)ノ

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[ 2013/01/20 13:21 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(0)
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