登檣礼

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荘園の亡霊 下

「どうでした、何か収穫はありましたかい?」
帰りの馬車に揺られながら、3人は遠ざかる荘園を眺めていた。
「まあ、それなりにな。あの屋敷はちゃんと人が住んでたってわけだ。知ってたか?」
軍人風の男が御者に言った。
「ほんとですかい?そりゃ知しませんでしたぜ・・・。へぇ、そりゃ庭もきれいなままでいるわけだ。なるほどなるほど」
御者は一人で納得したように笑い出した。





「Neya、さっきから顔色が悪いようだがどうした?酔ったか?」
軍人風の男が褐色の少女に尋ねた。
「・・・ううん、大丈夫」
答えたが、何か考えているようだった。
「そういえば去り際に彼女と何か話をしていたようだったが、何を話してたんだ?」
「うん、・・・あのね、部屋に飾ってあったある写真を見つけたんだ。それについてちょっとね」
「写真?気づかなかったが、そんなのあったかな?」
男は作家の顔を見た。作家も心当たりが無いといった表情で首をかしげた。
「で、その写真がどうかしたのか?」
「うん、ちょっとね。まあいいや、後で話すよ」
少女は取り繕うように笑顔を見せた。



酒場に戻る頃にはすっかり日も暮れ、「ただいま閉店中」の掛札も外されていた。
店の中ではカバーリョと先ほどの交易商がまだ酒を酌み交わしていた。
「おや、おかえり」
マスターが3人に気づき、声をかけた。それに気づいたように留守番の2人もジョッキを掲げてみせた。

「どうでした、屋敷の探索は」
交易商が興味津々といった様子で尋ねてきた。
「ああ、残念ながらあそこは幽霊屋敷じゃなかったよ。ちゃんと人が住んでいた。というか使用されていた」
「なんですって?それじゃ領主様はまだご健在で?」
「いやもう領主はいなかったよ。ただ屋敷で仕事をしている女性と執事はいたな」
「女性・・・その女性はどのような方で?」
「そうだな・・・20か30か、若いのにしっかりした女性だったよ。きっと昔の領主の孫娘とかそんな年頃じゃないかな」
「そうですか・・・娘が・・・」
交易商は深くうなずくと、悲しそうに遠くを見つめた。
「おいおい、さっきから随分と興味がおありのようだが、あんたとあの屋敷は何か関係あるのか?」
「い、いえ、そんなんじゃありません・・・」
交易商はあわてて否定すると、口を閉ざした。
「しかし幽霊ではなかったとなると、作家さんの題材にはなりそうもなかったってわけか」
いつの間にかマスターも横に来て、話の輪に加わっていた。
「それに関してはご心配なく。屋敷の女性から面白そうな題材をいただいたので」


作家は先ほど女性から聞いた話を皆に披露した。


「なるほど、かなわぬ恋、というやつだな」
「ええ。まだインパクトが足りないのでそこは作家としての腕の見せ所ですがね」
作家は二の腕をパンパンと叩いてみせた。

「・・・その青年も、実は不慮の事故で亡くなっていたんです」
交易商がポツリとつぶやいた。
「その青年も、交・・・いや野草の調達の途中で乗り合わせた・・・その・・・馬車、そう馬車が不慮の事故にあって死んでしまうんです。そして、彼もまた彼女に会いたいが為に、幽霊になって屋敷を訪れる。ってのはどうですかね?」
一同しばらく静まり返っていたが、作家が口を開いた。
「なるほど、それはいい案ですね。それで、2人は幽霊になって出会って、あの世で結ばれると?」
「いえ、結局2人は結ばれません。お互いきちんと葬られていないので、あの世へ旅立つことができないんです」
「うーむ、それだと悲恋で終わってしまうので、物語としては面白みが無くなってしまいますな」
一同、考えるようにまた静まり返ってしまった。

やがて、褐色の少女が口を開いた。
「あのね・・・その男の人は、男の人の亡骸は、今どこにあるのかな」
「どこにって、実際の話じゃないからどこにもないだろ」
「そうじゃなくて、えっと・・・、あのね、女の人の亡骸は、コリウスの泉に咲くユリオプスデージーの元にあるって!」
少女は瑠璃色の瞳に薄っすらと涙を浮かべながら訴えた。
「コリウスの泉・・・なぜそれを・・・」
交易商は驚いた表情で彼女を見た。そしてすぐに柔らかい笑顔を浮かべ、彼女に歩み寄り優しく頭を撫でた。
「そうか・・・彼女がそう言ったのか。コリウスの泉というのは、荘園の北を流れる川の中流にある池のことだ。よくお忍びで行ったものだなぁ。懐かしい・・・」
交易商はそのままふらっと店を出て行こうとした。あわてて少女が呼び止める。
「あ、あの・・・」
「・・・モスタガネムの西に岩礁があってな。そこに朽ちた商船が打ち揚げられているはずだ」
交易商は足を止めずに言うと、そのまま店を跡にした。


「おい、今のは一体どういうことだ!?」
軍人風の男が少女に尋ねた。
「えっと、屋敷にいた女の人といろいろ話をしてわかったんだ。帰りに写真の話したでしょ?その写真を預かってきたんだ。ほら・・・これ」
皆で差し出された写真を覗きこんだ。



その古びた写真に写っていたのは、屋敷にいた女性と、先ほどまでここにいた交易商だった。



「コリウスの泉と、モスタガネムの岩礁か。明日にでも調査隊を組んで出発しよう」
「そうですね。もしそれが見つかったら、手厚く葬ってやりましょう。それで二人がようやく結ばれるのであれば」



荘園の娘と庭師の青年



おわり

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[ 2013/04/09 20:51 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(0)
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