登檣礼

登檣礼をすべての人に捧ぐ・・・

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バルト海にて -黒船・序章- (下)

セビリアの街に夜が訪れようとしていた。酒場や食堂には明かりが灯り始め、港や広場に集っていた人々を吸い寄せていく。商館の立ち並ぶ一角にも、疎らではあるが窓から明かりがこぼれていた。

今日は珍しく3番商管にも人が集まっており、燭台やランプは今宵何日ぶりかの輝きを放っている。
テーブルの周りには何人かの商会員。その傍らに秘書が立ち、話を始めた。



[ 2012/10/01 01:31 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(0)

バルト海にて -黒船・序章- (中)

坂道を駆け下りる間も砲声は大きく、よりはっきりと聞こえていた。
ただその直後に聞こえる衝撃音が、桟橋や建物にぶつかる音ではなく海面への着水音であることは、少なからず俺を安心させた。

南門をくぐる頃にはもう町は臨戦態勢に入っており、海賊の上陸に備えている。
俺はそのまま一直線に港への道を駆け抜けた。


[ 2012/07/16 17:33 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(1)

バルト海にて -黒船・序章- (上)

セビリアの閑静な商館地区。
白壁の間に延びる青々とした空から、傾きつつも白く熱い太陽が見下ろしている。
3番商館は珍しく人で賑わっていた。カウンター内には書類の山を相手にしかめっ面をしている秘書、彼と対するところには頬に傷のある軍人風の男。その近くのテーブルに若々しい駆け出しの商人、その向かいにも同じく駆け出しの冒険者と思わしき若者。その2人を両手に見る位置に小柄な褐色の娘が座っている。さらに少し離れた(といっても剣を翳せば届くくらいの)ところには赤銅髪の男が柱に寄りかかって立っていた。

先ほど褐色の娘が長旅から帰ったばかりで、彼女の土産話を聞いていたところだった。
「さて、ひとまず私の話はおしまい。私も君たちの話が聞きたいんだ。何せ久しぶりだからね」

彼女は持参した琥珀色の瓶、ではなくもう一方の透明な角瓶の口を切り、皆のグラスに注いで回った。もちろんしかめっ面の秘書にも。
「いえ、私はまだ仕事が・・・」
「ちょっと一休みしようよ。根をつめすぎるとミスの元だよ」
ゴブレットを引っ込めようとする秘書の手を制し、透明に輝く液体を半分くらい注いだ。
「ほぉ、これは・・・ジンか? いや香りが違うな」
赤髪の男が言った。
「おそらく、ウォッカでしょう。北欧のフレーバードの一種かと」
若い冒険者が続けた。
「おお、するどいね。そのとおりフレーバード・ウォッカだよ。ちょっと前にリガへ行ったときにね、たまたま持ってたワインと交換したんだ。読めるかな?」
娘が瑠璃色の目を大きく見開き、瓶を彼の前に突き出してみせた。
「えーと・・・ズ・・・ジョ・・・? ・・・ウォドゥカ・・・?」
彼は目を凝らしたり見開いたりしながら、その見慣れない言語を懸命に読もうとしている。娘はそんな姿を見ながらケタケタと転がるような笑い声をあげた。

徐に、軍人風の男が口を開いた。
「フレーバード・ウォッカか。そういえば、バルト海でちょっとおもしろい経験をしてきたんだ。その話でもしようか」
「うん! 聞きたい聞きたい!」
娘は首だけ男のほうへ向けると、パッと華やいだ声で話を促した。



[ 2012/07/13 00:17 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(2)

帰れる場所に -その名は「バージニア作戦」-

幾度かの季節と、幾重かの人生が過ぎてもなお、セビリアの街は賑わいを絶やすことなく、今日も航海者と共に時を刻んでいる。


風薫る商館街の白い石畳に、赤銅髪の男の姿があった。彼は目の前に構えた建物を懐かしそうに見上げている。
「・・・変わらないな」
そうつぶやくと、「3」と書かれた年季の入った看板を指で弾いてみせた。金属とも陶器ともつかぬ甲高い音を短く響かせて、看板は彼の訪問に答えた。

「お帰りなさいませ、お久しぶり・・・でしたでしょうか」
商館の中ではいつもと変わらず、商会秘書が書類の整理に追われていた。
「まあ間違いではない。しばらくセビリアには寄ってなかったからな」
赤銅髪の男は苦笑いを浮かべながらカウンターへ向かうと、担いでいた麻袋の中から琥珀色の瓶を取り出した。
「1杯どうだ、ラーベナルト」
男は秘書に向かって瓶をかざした。
「おや珍しいですね。何かいいことでもあったんですか?」
「特段何も無いんだがね。今日はなんとなくコイツをやりたい気分なんだ」
男はコキュコキュと音を響かせながら、瓶の口を切り開いた。そして秘書が持ってきた厚手のグラス2つに、琥珀色の液体を注ぎ込んだ。
「乾杯しますか」
秘書がグラスを掲げた。
「何に乾杯するかな」
男もグラスを掲げた。
「では、元商会長の帰還を祝って」
「ははは、私の帰還か?それでこの酒は贅沢すぎるな」
2人はかすかに笑みを浮かべ、グラスを交えた。古いコルクのような香りと、懐かしく深い味が口の中に広がっていく。
「・・・ふぅ。久しぶりだなこの味も」
「ええ本当に。大きな仕事が終わったときしか口にしませんでしたからね。あとは特別なことがあったときくらいでしょうか」
「ああ、そうだな。確か前に飲んだのは・・・2年前だったろうか」


2年前。海賊マルナードと欧州を追われた不名誉な高官等が手を組み、カリブ海の至る所で悪行が繰り広げられていた。その無法化に歯止めをかけるべく、サルミエントやバルタザールの艦隊、そしてバーボンハウスからも義勇艦隊が遠征し、カリブ海は近年稀に見る大海戦の舞台となっていたのだ。


赤銅髪の男は2年前に見送った商会員の姿を思い出していた。
「2年前か・・・懐かしいな。今は向こうの状況を入手する手段がほとんど無くてね。カリブ方面の戦況については、何か情報が入ってないかね」
「もちろん入れてもらってます。黒鯱の連絡員が定期的にここへ報告に来てくださるものですから」
「そうか。それで、今どんな状況だ」
「はい。南カリブに関してはほぼ制圧完了し、戦火に巻き込まれた港や集落の建て直しが始まっているそうです。ただ、西カリブについては優位に戦闘が進んでいるものの、殲滅には至っておらず、単発的な海戦が後を絶たない状況だとか」
「ふむ。実質上の消耗戦というわけか。黒鯱らしからぬ戦いだな」
「バルタザール殿も同じように考えておられるようです。そこである計画が持ち上がっているらしいです」
「ほぉ、ある計画とな」
男は空けたグラスに再び酒を注ぐと、秘書の言葉を待った。
「サルミエント商会バックアップの元、北米大陸沿岸に大規模な開拓地をいくつも作ってですね、商業および軍事の拠点とする計画らしいです。ある程度の地盤が固まれば、そこから討伐艦隊を南下させて海賊殲滅を断続的に行うという狙いのようです」
「なるほど、カリブの国有開拓地ではいろいろと限界があるだろうし、民間の開拓地を利用すれば欧州の市場活性化にもつながるわけか・・・」
男は赤銅色の髭を指で弄りながら何事か考え、視線を秘書の顔に向けた。
「・・・確かこの戦いは当初、各国の庇護は受けられないはずだったな」
「おっしゃるとおりです。しかし討伐が比較的順調に進んでいることもあり、カリブ海の利権を各国が視野に入れ始めているのも事実です。現にイングランドやヴェネツィアが開拓地に送った護衛艦隊が、公式に黒鯱と作戦を共にしているという話も聞きます」
「なるほどな。安全になれば甘い汁を吸いに行きたくなるってわけだ」
男は天井を仰いだ。そして話を続けた。
「で、大陸の開拓地がサルミエントの庇護を受けるって話だったかな。それはおそらく無償でという話ではないだろう。そんなの他の商会が納得するだろうか」
「当然納得しないでしょうね。特に我々の商会は」
秘書は入り口のほうに目をやると、やれやれという表情を浮かべた。男もそちらのほうへ目をやると、いつの間にか1人の淑女が入って来ていた。
「お帰りなさいませ、会長」
秘書は笑顔で迎えた。
「おぉ、久しぶり」
男も軽く手をあげて挨拶した。
「久しぶりね」
彼女も笑顔で答えた。


「ということは、バーボンハウスは独自で開拓地を立てると?」
「そうよ。わざわざサルミエントの力を借りて手間賃搾り取られるより、私たちだけでやったほうが早いし楽だし得じゃない?」
「まぁそうでしょう。ただ・・・私が言うのもなんですけど、人員がきびしいのではないかと」
「大丈夫よ。有力者を何人も連れ戻してるから」
彼女は不敵な笑みを浮かべた。
「まずは開拓部隊ね。これはもう剣術に長けた冒険家として、討伐艦隊から編隊長に帰還してもらうことになってるわ。それとあなたと私の配下から何人か駐留させれば問題ないでしょ。次に産業支援と貿易を行う商船隊ね。これは私と提督一派がいればどうってことないわ。それと・・・駐在員として、通訳家のあの子と元会長に航海者として復帰してもらうつもりよ」
「元会長とは・・・疾風の御仁ですか!?」
「ああ、疾風の提督ではなくその先代の彼よ」
「おおっ、なんと彼が復帰なさる・・・というか復帰させる・・・ということですか」
「お願いしたら快く引き受けてくれたわ。さすがはバーボンの古参ね」
彼女の手腕に軽く慄いている2人を尻目に、彼女はさらに続けた。
「それで、実は疾風の提督さんにも話はしてあるの。彼はカリブのバーボン艦隊を束ねてる身だからどうかなぁとは思ったんだけど、現地には当時の副会長が2人共いるらしいから、統率が乱れるようなことはまずないわね。それから・・・そうそう、サーカムライナーの彼女も今はこっちの海域に戻ってきてるみたいだし、疾風の提督さんと組んでもらえれば、開拓地の哨戒は完璧ね♪」
喉が渇いたとばかりに、彼女は棚に飾ってある一番綺麗なゴブレットを取ると、カウンターの隅に置かれた小型のワイン樽からワインを注ぎ始めた。
「そこまで計画を立てているならいけそうな気がしますね」
その様子をただただ見ていた秘書が、ようやく口を開いた。
「でしょ?バーボンハウスってのは恐ろしいほどの連携力があるから。ちょっと勢いが衰えてきたこの頃にあってもなおこの連携は崩れてないのよね。ホントすばらしいわ」
ワインを1杯空けると、彼女はもう1杯ゴブレットに注ぎ始めた。
「あとね、この作戦名も決めてあるの」
「ほほぉ、作戦名ですか、聞かせてもらいましょう」
「開拓地の地名を取って、作戦名は『バージニア作戦』と命名します。参加艦隊は『バージニア艦隊』を名乗り、カリブ遠征中の『バーボン艦隊』と双璧を成すような大活躍を目指しますっ」
「『バージニア作戦』ですか。すばらしいですね」
「うむ。『バージニア艦隊』と『バーボン艦隊』で双璧とか、なかなかカッコイイではないですか」
「でしょ。さあ作戦決行の乾杯よ!乾杯!」
彼女はゴブレットをかかげ、一気に飲み干すと、秘書に向かって言った。
「ぷはーっ。それじゃ私は一足先にバージニアへ向かうから。復帰組の方々についてはヨロシクね」
そう言い残し、彼女は商館を後にした。
「・・・すごいアクティブですな・・・」
「・・・うむ、すごいパワーだ・・・」

商館に残された2人は唖然としながらも、やがて来るであろう戦いの火蓋と開拓地への思いを新たにしたのである。
「コイツを空けて、正解だったのかもな。・・・おかえり、友よ」
2つのグラスに注がれた琥珀色の液体がまた、商会の節目を彩っていた。


幾度かの季節と、幾重かの人生が過ぎてもなお、セビリアの街は賑わいを絶やすことなく、今日も航海者と共に時を刻んでいる。




[ 2012/05/22 01:15 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(2)

帰れる場所に -財閥・船長編-

地中海に涼しげな風が吹き始めた。うだるように暑かった日々が懐かしく思えるほど、海風が肌に冷たく触れていく。
セビリアの街は相変わらず人の往来が激しく、隣国の本拠地にも劣らぬ活気の良さがある。特にここ最近は、南蛮貿易による物品の流入が激しく、見慣れぬ交易品や変わった装束を目にする機会も増えた。

そんな街の様子を横目で見ながら、赤銅髪の男が3番商館へと入っていった。

「お帰りなさいませ、会長」
机に向かっていた商館秘書が顔を上げ挨拶をした。
「うむ」
会長と呼ばれた男はそのままカウンターへと向かった。私がやりましょう、と秘書があわててこちらへ来るのを手で制し、棚に入っている琥珀色の瓶を取った。
「君もやるかい?」
男がグラスを軽く振ってみせた。
「いえ、私は仕事が・・・まだこんなにありますので」
秘書は机の上の紙の束を指差した。会長は軽く肩をすくめると、グラスに酒を注いだ。
「ずいぶんと忙しそうじゃないか。そんな束になるまで放っておいたわけではあるまいに」
「例の南蛮交易の影響ですよ。商会の皆さんもいろいろ仕入れていらっしゃるもんで。管理局も市場の動向を把握したいらしく、各商館の秘書は明細の提出が命ぜられてますんでね、自然と書類も増えるってもんです」
「そうか・・・それはご苦労だな」
男は酒を一口飲むと、ふぅとため息をついた。
「最近ウィスキーはお召し上がりにならないんですね」
「ああ、なんとなくラムにしたい気分なんだ。みんなが帰ってくるまでウィスキーは控えようかなと思って」
「そうですか・・・みんなどうしてるでしょうね・・・」
「南カリブで拮抗してるって話は聞くんだが、それ以上は黒鯱の緘口令で聞き出せないんだよな・・・」
「そういえば出航所役人から、護送艦隊が一旦帰港するらしいという噂を聞きました」
「ほぉ、誰か捕らえたのか」
「セビリア入港って聞きましたので、イスパニア高官かあるいはその部下じゃないかと思うんですが、詳細まではちょっと」


数日後、噂どおり護送艦隊がセビリアに入港した。商船6隻からなる護送艦隊と、随伴の護衛艦2隻だ。
出航所には人垣ができ、下船してくる人々を出迎えている。どうやら捕らえられたのは、初期の戦闘で捕虜となったカリブ海賊の副長クラスの人間らしかった。

この日も会長はセビリアにいた。書庫で学者と南蛮の美術品について語り合っていたが、護送艦隊が到着したという話を聞くと、話を早々に切り上げ、出航所へと向かった。数ヶ月前に出撃した同胞の状況が聞けないかと思ったからだ。
港は多くの人で賑わっていた。護送艦隊には捕虜以外にも、カリブの名産品が満載され、それらを交易所へ運ぶ軍人と、我先に取引しようとする商人とで、ちょっとした行軍状態になっている。よく見ると、近くに停泊中の大型商船からも交易品らしき荷物が山ほど降ろされている。会長はその見覚えがある商船をじっと見つめていた。
「へぇ、護衛艦っていうからどんな立派な軍艦かと思ったら、大型商船じゃねえか」
会長の近くにいた人夫が言った。
「あれが、護衛艦だと?」
会長は人夫に尋ねた。
「ああ、そうでさぁ。この船と、あっちの黒鯱のフリゲート、それとあの砲艦が護衛なんだそうで」
「ということは、護送艦隊は6隻ではなく5隻ということか。それで護衛艦が3隻と」
「まぁそういうことらしいですぜ。・・・ところで、旦那は3番商館の会長じゃねえですかい?」
「ああそうだが、それが何か」
「へっへっ、だったらあの船に見覚えがあるはずでさぁ」
人夫は大型商船を指差した。
「ああ、確かに見覚えはある。だが護衛艦ってことは、以前どっかで見た黒鯱の船だろう」
「いやいやそいつぁ見当違いってもんでさぁ。黒鯱が何で商船なんか持ってるんです?」
「・・・うむ、言われてみれば確かに」
「でしょう、ということは・・・おっと、噂をすればなんとやら。あちらの令嬢を御覧なさい」
指差す方向に、一人の貴婦人がいた。何人かの将官と話をしている。
「・・・ああ、財閥の船か」
会長はニヤリと笑い、彼女のほうへ歩いていった。


「ということは何? この交易品はイスパニア政府が接収すると?」
「ああ、当然だ」
「ちょっと信じられない! これは私のお金で買った交易品よ? 戦闘中の戦利品だったら話はわかるけど、正規の手続きで買い付けた品物までどうして差し出さなきゃならないの?」
「けっ、たかが傭兵の分際で。カリブから艦隊組んで戻ってきたのは交易のためじゃねえんだ。捕虜の護送が目的だ。それなのになんだお前は、護衛任務に商船で当たるとは。私欲を優先しやがって!」
貴婦人と将官が何事か言い争っていた。
「やめんか貴様、令嬢相手に何をわめいている?」
男が割って入った。
「ん、誰だ貴様は?」
将官が男を睨みつけた。
「俺か、俺はあの船の船長だが」
男は後ろに停泊している黒鯱の紋章を掲げたフリゲートを、親指で指差した。
「なっ、こ、これは失礼、任務お疲れ様でございました」
「うむ、それで、今何を言い争っていたんだ?」
「いえ、ちょっとした問題があって・・・」
「ちょっとした問題? そんなのは後でいいだろ。我々は忙しいんだ、取り急ぎ書類にまとめて本部か王宮に回してくれればいい。あとでじっくり読んでやる。わかったな?」
「いえ、ですが・・・」
「文句があるのか? ならばそれもまとめて書類に書き足しておけ!」
男は将官に吐き捨てると、下船を終えた部下に告げた。
「よし、お前らもう一仕事だ。お嬢の積み降ろしを手伝ってやれ。交易所への手配もな!」
了解でさぁ、という威勢のいい声が港に響いた。
将官はその声に圧倒され、すごすごとその場を立ち去った。
「助かったわ、ありがとう提督」
「なあに、礼はあっちの旦那に言いな」
視線の先には赤銅髪の男が立っていた。
「まぁ、久しぶりだこと」


会長と令嬢は酒場へとやってきた。
「いらっしゃい、ご注文は・・・っと、今日は久しぶりにアレですかな?」
マスターがいたずらっぽく笑ってみせた。
「さすが、わかってらっしゃるわね。ただいま、マスター」
「お帰り、お嬢さん」
2人の前に琥珀色のグラスが置かれた。2人は顔の前にグラスを持ってくると、深く息を吸い込んだ。
「久しぶりだわ、この香り」
「ああ、私もこれは控えてたもんでね、久しぶりなんですよ」
「そう、それじゃ乾杯しましょ」
グラスに軽い音を響かせ、2人は喉を潤した。
「・・・ふぅ、ところで、なんであなたが護衛艦に?」
「特別な理由はないわ。ドミンゴに進駐してる軍人で、適当な人が選ばれたっていうだけのこと」
「なるほど。あの黒鯱の人は?」
「バルタザールの側近の部下よ。報告を兼ねての帰国ですって」
「ふむふむ、建前上は正規軍を提督にってところですかね」
「ええ。それよりさっきはありがとう。もう少しで交易品全部接収されるところだったわ」
「いえいえ、たぶん言いがかりだろうと思って、彼に仲裁をお願いしただけですよ」
「まぁ戦況が拮抗してるんで、歓待されないだろうって予想はしてたけどね。ちょっと賊軍の抵抗が激しくて、バルタザールも攻めあぐねてるわ」
「では、またすぐに戻るんですか?」
「いいえ、私はもういいわ。ろくな報酬ももらえないし、南蛮にもいけないんじゃつまらないし」
彼女はペロっと舌を出しておどけてみせた。
「では、バーボンハウスに戻ってこれますね」
「うん。帰ったら会長を探さないとって思ってたとこだったから、ほんといいタイミングだったわ」
「では後で入会申請――」
「あ!!」
彼女が急に大声を上げた。
「ど、どうしました!?」
「キャプテンも戻ってきてるんだった。さっきのもう1隻の護衛艦、あれキャプテンの船よ」
「なんですって!?」
酒場の扉が開いた。一人の男が2、3歩中に入ると、きょろきょろとあたりを窺っている。彼女が彼を指差した。会長もそちらを見る。よく見知った、とても懐かしい顔だった。
「ごめんキャプテン、あなたも一緒だったこと、たった今思い出したの」
彼女が男に向かって言った。
「え^^;」
男は参ったなあという感じで頭を掻いた。
「おかえり、キャプテン。一杯やりましょう」
会長はグラスを掲げた。





リリさんとヌパロフ氏が帰ってきましたので、その記念に。
私かっこよく書きすぎたか^^?

[ 2010/10/11 17:59 ] 書き物 | TrackBack(0) | Comment(2)
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